氷壁,読了
最近リバイバルでドラマになって注目されていた氷壁を読んだ.
- 作者: 井上靖
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1963/11
- メディア: 文庫
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以前,三島のクレマチスの丘にある井上靖文学館に訪れたことがあって,それから読もう読もうと思って,今になってしまった.
登場人物の誰も彼もが魅力的で,読んでいるうちに自分がアルプスと東京を行き来している気分にさせられた.それくらい小気味良くストーリーが展開していく.
小阪と魚津の登攀ははまさに「山日記」のスピードで進んでいく.言葉は簡素で必要最小限なのだけれども,自然そのものがスッと僕の心に入ってきた.
一方で,美那子を中心としたドロドロした都会の話は,ゆったりとしたペースに落ち込んで,どうしても咀嚼するのに時間がかかる感があった.
それは取りも直さず,僕の未熟さゆえということかもしれない.
だけれども,なんだかそれだけでは説明のつかないような,後味の悪い読了感があった.
それは魚津がかおるのもとにたどり着けなかったことに発しているのではないだろう.井上先生が11章で三者三様の解釈があります,あとは読者のご想像にお任せします,といって終わったからなのだと,僕は思う.
氷壁は,10章で終わるべきだった.
ただ,魚津の物語として見ると,そう思うけれど,美那子の物語としてみると11章は必要なんだろうな.
うーん,えらそうに.