孫文,下巻読了
- 作者: 陳舜臣
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/03
- メディア: 文庫
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下巻です.辛亥革命まで.
大清帝国の総理大臣に袁世凱が就任し,いまや中華民国の臨時総統として孫文が就任せんとする時.その密約を体制派と革命派が交わした南北和議までが書かれている.
孫文の総統就任の誓詞
「・・・・・・専制政府既に倒れ,国内に変乱無く,民国が世界に卓立し,列邦の公認するところとなるに至れば,斯の時*1,文*2は当に*3大総統の職を解くべし.謹んでここに国民に誓う」
革命の始まりである,1895年10月26日に行った重陽蜂起*4から,この誓詞を読み上げる1912年1月1日まで実に16年の歳月が経過している.
そうしてまで手に入れたのは
という会党*7の理想の実現であって,地位や名誉ではまったくもってなかった,というのがこの誓詞から分かる.
夢の追求は,革命の実現とは滅私が必然なのだろう.
対する袁世凱や康有為なんかは,やはり地位や名誉といったものが大事だったのだろう.
「中国の国民が中国人であるということ,中国という国自体を認識していない時代」に,中国を革命し中国という国の概念をその国民にもたらしめる.
それは,まったく概念の存在しないシステムや技術を生み出して,それを世の中に広めよう,啓蒙しようというエンジニアの思想とも通じるところがあるなと想う.
孫文の様に「中国を革命する」という崇高な理想とはちょっと違うけれど,その姿勢は見習うべきところが多い.